FIB装置(Focused Ion Beam; 収束イオンビーム)は、電子の代わりにイオンで収束ビームを作りだし、試料に照射することで加工や観察を可能にした装置です。イオン源としてガリウムなどの液体金属を用いるため、電子と比較して質量が大幅に大きく、試料原子と強い相互作用を起こします。主に下記の3つの機能があります。 ①観察;イオンは試料との最初の衝突で2次電子を放出するため、検出器と組み合わせることで試料最表面を画像化できます(SIM;Scanning Ion Microscope)。 ②加工;細く絞ったイオンビーム照射方向に沿った微細な加工ができます。 ③成膜;ガスなどを導入することで、局所的に薄膜を形成することができます。 上記のうち最も活用されているのが①と②を組み合わせた微細加工技術で、数百nm~数nmに絞ったビームで試料の状態を見ながら断面加工できるため、サブミクロンオーダーでの加工位置精度で正確に対象部位を狙うことが可能となります。FIBでの加工と同様の実験機器として、イオンミリング加工がありますが、大きな違いはFIBが加工位置精度サブミクロンオーダー、加工範囲20μm角程度であるのに対し、イオンミリングは加工精度数十ミクロンオーダー、加工範囲1000μm角程度など、比較的大きいサイズの対象を観察する際に用いられます。より微細な構造に注目する場合はFIBを使用すると良いでしょう。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Micro-scope)などにより微少領域を観察する際などに用いる微少ブロックの形成(マイクロサンプリング法)に用いられます。TEM 試料台に搭載後、ビームの特性とマニピュレータ機能を組み合わせて、厚さ100nm程度の目的部位を摘出します。またFIB加工と顕微鏡観察を繰り返し、得られた連続画像をコンピューター上で再構成することにより、試料の三次元構造解析が可能となります。