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<PCRの特徴>
PCR(Polymerase Chain Reaction)はDNAの特定の塩基配列を試験管内で短時間に増幅する手法です。
生体内では、細胞分裂の際にDNAポリメラーゼという酵素が塩基配列を転写することにより、DNAの増幅が起こります。その反応を試験管内で再現することで、目的とする配列を特異的に増幅することができます。
理論上、1回の反応で2倍、2回で4倍とねずみ算式に増幅されるため、数時間の反応で約100万倍の増幅が可能になります。なので、試料がngオーダーの条件下でも分析に必要なDNAを確保できます。
<PCRの原理>
まず、20〜30残基の塩基配列(プライマー)を、鋳型DNAの二本鎖中の目的領域を挟み込むようにペアで設計し、DNA合成機で作成しておきます。
DNAポリメラーゼや材料となるオリゴヌクレオチド、鋳型DNA、プライマーの混合溶液をPCR装置にセットします。
DNA増幅の流れとしては、まず、94℃から98℃の温度下で鋳型となる二本鎖DNAを乖離させます。二本鎖DNAは塩基間の水素結合により二本鎖になっていますが、この反応条件下では水素結合が切断されます。
続いて、50℃から65℃に温度を変え、一本鎖になったDNAにプライマーを結合させます。この過程をアニーリングと呼びます。反応液中のプライマー量が鋳型DNAよりも多く、塩基のA-T、C-Tの相補性も手伝って、特定の位置にプライマーが結合します。 この時、二本鎖DNAの50%が一本鎖に乖離する温度(Tm値)を見積もる必要があります。Tm値はプライマーの塩基配列を元に理論上算出することができ、通常は±5℃の範囲で設定します。
続いて、溶液温度をDNAポリメラーゼの至適温度まで上昇させることで、DNA合成反応が進行し、元の塩基配列を基にして相補鎖が合成されます。
この3ステップを繰り返し行うことで、目的とする部位の配列を短時間で増幅させることができます。また、PCR法により作製したDNAの状態は電気泳動により分析、評価できます。
<PCRの試料の前処理>
・プライマーの設計
この時に、C-Gを多量に含むプライマーは類似した配列にアニーリングしやすいため、50%以下になるようデザインしましょう。また、Gが連続して4つ並ぶ配列はテトラプレックス構造を取る恐れがあるため、避けた方がよいです。
可能な実験例
○塩基配列の決定
ゲノム配列が決定されていないDNAを増幅した上で、ショットガン塩基配列決定法やシークエネーターを併用することで、塩基配列を決定することができます。
○特定遺伝子の検出
DNAの持つ多形性を利用し、加工食品の肉腫判定や結核などのウイルス性疾患の検査で実用化されています。リアルタイムPCRという、電気泳動による検出なしで目的DNAの増幅を確認できる手法を用います。
○cDNA(complementary DNA)の増幅
逆転写酵素でcDNA-mRNAハイブリットを合成した後、RT-PCR(reverse transcriptase-PCR)を行うことで増幅することができます。
※組織により上記実験ができない場合がございます。
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