(1) 海水中重金属の分析
海水中には広範囲の濃度で微量元素が含まれていて、亜鉛、ニッケル、鉛などng/L ~ μg/Lレベルの微量重金属の含有量を明らかにするためにICP質量分析を用います。
海水には数パーセントを超えるナトリウム、塩素なども含まれているため、海水をそのまま装置に導入して測定することができません。
そこでキレート樹脂分離法により測定前に海水から微量重金属を分離することを行います。海水中の重金属は有機または無機の溶存物配位子と錯体を形成している場合があるため、キレート樹脂に通す前に硝酸で処理します。
酢酸アンモニウム溶液で溶液のpHを調整したのち、重金属多価イオンと錯体を形成できる配位子をもったキレート樹脂に海水を通します。樹脂から重金属を取り出すために1~3mol/Lの希硝酸を樹脂に通します。
(2) 生体試料
生体中の微量金属と疾病の関係に調べるあたり、生体中の元素の多くはμg/L以下の極低濃度しか含まれていないので、ICP-MSのような高感度の測定が必要です。
しかし試料に由来するNa, K, Ca, S, Pなどの妨害イオンの存在により測定が困難です。そのため質量分解能が高いICP-SF-MS(二重収束型ICP-MS)を使うことで妨害を除くことができます。
硝酸や過酸化水素水によって生体試料を分解処理します。塩酸や硫酸ではSやClなどの妨害イオンが生じてしまうため使用を避けます。
(3) 半導体材料
半導体の製造ではわずかな金属汚染でもデバイスの不良につながってしまうため、微量の金属分析が極めて重要で、ICP-MSにより微量の金属分析を行えます。
シリコンをフッ化水素酸や硝酸の混酸で溶解して不純物を測定します。(このときSiF4が生成するが、沸点が-95.1℃であるため加熱して大部分を除去することができます。)
※組織により上記実験ができない場合がございます。